リハビリとなにが違うの? ~接骨院、鍼灸、マッサージ、整体について

在宅でのリハビリテーション
ミチル
おじいちゃん、マッサージの先生が来たよー!
チルチル
違うよ、あれはリハビリの先生だよ(でも、なにが違うんだろう??)
リハビリの仕事をしていると似た職業に見えるのか、治療院、マッサージ、整体などの効果を聞かれることがよくあります。巷でも看板を見る機会が増えていますが、一般の方にはそれぞれどのような違いがあるのか、浸透しているとは言えないようです。ここではそれぞれの特徴について説明します。

ちなみにリハビリの専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)についての説明はこちら👇
🔷参考記事:「PT、OT、STとは? 3つのリハビリ専門職について

接骨院

他にも整骨院、骨つぎなどという名称で店舗を構えていることが多いです。柔道整復師 という資格を取得している人が治療に当たっています。

柔道整復師とは国家資格で、取得にはそれを専修している専門学校や短期大学で3年以上あるいは大学で4年学んだ上で、国家試験に合格する必要があります。

日本柔道整復師会のホームページには、その治療について「骨・関節・筋・腱・靭帯などに加わる急性、亜急性の原因によって発生する骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対し、手術をしない「非観血的療法」によって、整復・固定などを行い、人間の持つ治癒能力を最大限に発揮させる治療」と書かれています。

「急性」とは受傷から間もない時期で症状は強く目立ちます。また悪化や変化もよく起こります。一方で「慢性」とは症状が長期化して急激な変化はないものの続いている状態です。「亜急性」はその両者の中間とされています。明確な日数的な区分があるわけではなく、病状を見た判断になります。

健康保険の適応 は急性又は亜急性が原因の外傷に対するもの(骨折や脱臼の応急治療については医師の同意が必要)で慢性の症状には適応されません。日常生活からくる肩こりや腰痛も保険はききません。一方で事故や労災のケガには適応となります。

✍ 骨、関節、それに関連する筋肉や靱帯などに関する専門家であり、脱臼、骨折、捻挫、挫傷など整形外科疾患に詳しい印象があります。整復固定および後療法としての徒手療法、物理療法、運動療法が主な治療法です。骨・関節の問題に対して柔道由来の徒手療法で治療するのが特徴だと思います。

日本古来から伝わる柔術の技法を治療に取り入れたのがルーツであり、そこに後から伝播した外国の医学を取り入れて現在の治療技術に到っています。ちなみに現在も養成校では多くが柔道の実技授業を取り入れています。

柔道の技の扱い方が骨・関節治療に通じるものがあるからで、理学療法士の私から見ても上手な先生の治療は感心させられます。

鍼灸

「はり師」と「きゅう師」という資格がありいずれも国家資格です。取得にはそれを専修している専門学校や短期大学で3年以上あるいは大学で4年学んだ上で、国家試験に合格する必要があります。

両方持っている人を一般的に鍼灸師と呼びます。鍼灸は「しんきゅう」や「はり・きゅう」と読みます。「はり・きゅう」「鍼灸」などの看板があれば、鍼灸師が治療にあたっている治療院です。

✍ 鍼や灸による治療は中国をルーツとしています。経穴、経絡など身体に分布する、俗に言われる“ツボ”のような部位を鍼やお灸や手指によって刺激し、身体に備わる治癒力を引き出すものです。

長い歴史の中で様々な流儀が派生し、鍼灸師の間でも「鍼灸とは何か」という問いに対して、細かい部分では見解の違いがあるようです。鍼にしても様々な種類が見られます。

鍼灸のような東洋医学と呼ばれる治療法は、江戸、明治時代以降の西洋医学の普及によって一時期衰退していた時期もありましたが、現在では逆に西洋医学がそこから学ぶ事例も見られており、可能性を秘めた医学であると認識されています。

健康保険の適応 は、神経痛、関節リウマチ、腰痛症、五十肩、頚腕症候群(首から肩、腕にかけてのしびれ)、頸椎捻挫後遺症(むちうち症)で可能ですが、医師が治療の必要性を認める同意書が求められます。また病院で治療を受けている時期は、同じ病気で鍼灸にかかること(保険適応)はできません。

なお、鍼灸師の資格の他に、後述のあん摩マッサージ指圧師の免許も持っている場合、「鍼灸マッサージ師」と呼ぶこともあります。

あん摩・マッサージ・指圧

あん摩、マッサージ、指圧といった治療は説明する必要がないほど一般的に浸透していると思います。しかし、公式にこれらの名前で治療を行って良いのは医師とあん摩マッサージ指圧師という国家資格を持った者のみです。理学療法士や看護師が病院や診療所で行うことは一部認められていますが、それ以外では認められていません。

例えば、世間でよく見られる、揉みほぐしやリラクゼーションという業種 🤔 は一見するとマッサージと同じですが、国家資格に基づかない整体業に含まれます。整体については後述します。

あん摩マッサージ指圧師も他の資格と同様に、取得にはそれを専修している専門学校や短期大学で3年以上あるいは大学で4年学んだ上で、国家試験に合格する必要があります。

健康保険の適応 について特に病名の指定はなく、「筋麻痺、関節拘縮など」とされています。単純な肩こりなどでは保険適応にならないということです。また、保険適応になるには医師が治療の必要性を認める同意書が必要になります。

歩行障害や病気の状態などにより治療院に通うことができない方は、訪問マッサージを受けることもできます。これも健康保険を用いるには筋麻痺、関節拘縮などの症状であり、医師の同意書が必要です。

鍼灸は同じ病気による同時期の病院との併用は認められませんでしたが、マッサージの場合はそのようなことはありません。

整体

接骨院、鍼灸、あん摩・マッサージ・指圧がそれぞれ国家資格に基づく治療であったのに対して、「整体」は行う上で特に資格が必要ありません

驚かれるかもしれませんが、その是非を問うた最高裁の判決が昭和35年にありました。その内容は「人の体にただちに害を及ぼすものでない限り、職業選択の自由の範囲で認められる」というものでした。

この判例を拠りどころに、国家資格がなくても身体の状態を整える店舗を構えることが可能になりました。これが整体業で、揉みほぐし、リラクゼーション、サロン などの名前が付いた店舗は多くがこの整体業に含まれます。ちなみに「治療」や「治す」という言葉は、整体では公式上は使えません。それはそのような行為は医師や医療従事者の範疇と考えられているからです。「施術」「ボディケア」などという言葉の使い分けをします。

整体業の特徴は参入するための資格がないことで、数日の研修をしただけで施術に当たることも現実にあります。それでは、整体がどれも受けるに値しない危険なものであるか? と言えば、そうではないと私は思います。

日本では前述の柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師などと違い、開業が法律上認められていない職種 があります。例えば、理学療法士、作業療法士というリハビリの専門職でもそうですし、海外では国家資格であるカイロプラクティックやオステオパシーという医学も日本ではその名の下に開業することはできません。

✍ そのような人々が個人で仕事をしようとすると整体業という括りしかないのです。

整体の実際は、技術の差が大きいということでしょう。数日しか勉強していない素人のような人もいれば、国家資格者でも歯が立たないような素晴らしい技術を持った人もいます。

その判別は難しいところです。行われている施術の内容も様々だと思います。実際に受けた方がいれば参考にして、口コミやホームページを見ながら、気になることは受ける前に質問するようにしましょう。

最初は慣れないので軽く施術してもらうように頼むのも良いでしょう。その時の感触をもとに自分に合うか判断すれば良いと思います。

まとめ

国家資格に基づく職種と整体について書かせていただきました。

法律的に言うとこのような形なのですが、現実にはもっと複雑です。例えば、柔道整復師が純粋に柔道整復だけやっているかと言えばそうではなく、運動学を学んでトレーナーのような仕事をしていることもありますし、カイロプラクティックを学んで実践していることもあります。鍼灸師にしてもあん摩マッサージ指圧師にしても、自分の専門分野から離れたことを勉強して自分の技術に取り入れようとしています。東洋医学にしても、現在は西洋医学の知識や技術を取り入れています。扱う技術において、それぞれの職種の境界が法律ほどはっきりしていない のが現状です。

国家資格についてですが、持っていることで最低限の知識と技術はあると推測できますが、それだけで治療に十分な力量を持っているかと言えば、それは保証できるものではありません。どの業界でもそうだと思いますが、医療の世界でも自己研鑽に熱心な人もいればそうでない人もいます☝

どのような職種でも素晴らしい技術を持った人がいます。そのような人は相手がどのような身体の状態であれ、少なくても害をなすようなことはしません。リハビリも含めて言えますが信頼できる人を探すことが大切⭐だと思います。