はじめての介護のための「便利な福祉用具」まとめ

在宅でのリハビリテーション
チルチル
ここでは介護でよく使われる福祉用具について紹介します。
ミチル
保険でレンタルや補助ができるものも多いのであわてて買わないようにしてね。

身体が不自由な方やそのご家族にとって、福祉用具は大きな助けになります。実費で購入すると高額になりますが、介護保険で多くがレンタル可能 であり、購入であっても補助が使える場合があります。生活の状況に応じてケアマネージャー(以下ケアマネ)やサービス担当者が勧めてくれると思いますが、もし取り入れたい福祉用具があるならケアマネに相談すると良いでしょう。

全てを紹介することはできませんが、便利な福祉用具の一部を紹介します。

介護ベッド(特殊寝台)

電動で上半身を起こすことや、高さを上下することが可能なベッドです。身体が不自由な方にとって、布団から立ち上がるのは大きな労力がかかります。さらに障害が重度になり介護が必要になると、電動の介護ベッドは大きな助けになります。

介護保険のレンタルは要介護2〜5の方が可能 です。要支援の方や要介護1の能力があれば、ベッドのレンタルは必要ないという考えなのでしょうが、実際には認定された介護度と能力の間にズレがある場合も見られます。

寝返りや起き上がりが日常的にできない場合、要支援や要介護1でもレンタルが認められることがあります ので、そのような場合はケアマネに相談してみましょう。

また、福祉用具業者によっては、実費でベッドのレンタルをしていることもあります。実費のレンタルであれば、価格設定はそれぞれ業者ごとに違います。まだ付き合いのある業者がいないのであれば、いくつかに問い合わせてみるのも良いでしょう。

介護ベッドが必要な方というのは、それなりに身体の障害が進んだ状態だと思います。何らかの保険・福祉制度で負担を減らせる可能性があります。あわててベッドを購入される方もいるのですが、まずはケアマネ、サービス担当者などに相談してみることをお勧めします。

移動用リフト

ベッド-車椅子間など乗り移ることを「移乗」と言います。基本的には座った姿勢から立ち上がって移るのですが、立ち上がり能力が低下、あるいはできない場合は介助して行います。

介助の労力が大きい場合、移動用リフトが役に立つことがあります⭐ 身体に吊り具を装着してもらい、電動で引き上げて移動します。車椅子の座位は問題ないものの、移乗の介助が難しい場合によく使用します。

具体的には麻痺が強く身体が大きい方や、認知症や高次脳機能障害があり、介助に上手く従うことができない方など介助量が特に多い場合や、あるいは介助する方が老齢など、介助量に比べて介護力が足りない場合にも重宝します。

装置自体が大がかりで使用するにも手間がかかるので、多くの人が利用するわけではありません。最初にカタログを見て敬遠される方もいます。しかし、ベッドから全く動けないというのは活動範囲がほとんどないに等しいので、それを解消することで大きく生活範囲が増える場合もあります。ケースによっては大きな効果を発揮します 💪

こちらの事例もリフトを活用しました 👇
在宅と病院のリハビリの違い ~ある利用者様を事例として

ベッドに装着するタイプやキャスターで移動するタイプなどがあります。

介護ベッドと同じく要介護2〜5でレンタル可能です。

ポータブルトイレ

トイレを自分で済ませるというのは、多くの方が希望として話すことです。それには、尿意や便意を自分で感じてトイレまで移動できなくてはいけません。

排泄動作だけではなく、移動に問題がある方にとってポータブルトイレは助けになります。寝起きは動作が不安定になりやすいため、夜間だけ使用している方もいます 🌃

ポータブルトイレにも様々な種類 があり、重量が軽いもの、重いもの、キャスター付きのもの、中にはウオッシュレットの機能が付いたものもあります。

寝室や居室にいつも置いてあることが気になる方は、キャスター付きであれば必要な時だけ持ってきてもらうこともできます。重いか軽いかでは軽い方が良いように思うかもしれませんが、立ち上がりが不自由な人はそこを持って立ち上がることもあり、そのような場合、軽ければひっくり返ってしまいます。
このように身体の状態や用途によって適したものが変わってきますので、事前にサービス担当者に相談すると良いでしょう。

排泄物の処理についても、使い捨てパックなどを用いれば、器材を洗う手間もなくなります。使用に抵抗の強いポータブルトイレですが、人によっては座ることで排泄が上手にできる人もおり、選択肢として頭に入れておくことは有用 だと思います。

ポータブルトイレはその性質上、レンタルはできませんが、介護保険の補助の対象で、1〜2割の自己負担で購入することができます。条件や上限額がありますので、事前にケアマネに必ず相談するようにしてください。

手すり

手すりというと住宅の壁に取り付けられたものをイメージしがちですが、工事をしなくてもベッドに取り付けたり、天井-床間につっかえ棒のようにしたりと、設置できるタイプ もあります。

手すりが一部で済む場合、住宅の構造上、工事を行いにくい場合などに有用です。手すりの効果がわかりにくい場合に試しで使うこともあります。一度工事をしてしまうと後戻りすることができないので、私も設置してすむ箇所なら設置型を使用します。介護保険でレンタル可能です。

車椅子

手動式、電動式、リクライニング式(上半身が後ろに倒れるタイプ)など車椅子には多くの種類があります。さらにアームレスト(肘掛け)やレッグレスト(足掛け)が外れるタイプもあり、介助が必要な場合、そのような細かい機能が役に立つこともあります。理学療法士や作業療法士などと相談して選ぶと良いと思います。

介護保険では要介護2〜5でレンタル可能です。室内用、屋外用など状態によって2台借りることも可能です。

身体の状態が変わると適した車椅子も変わってきます。神経難病など進行性疾患の場合は、頻回に車椅子の形状を変える場合もあり、レンタルを上手く活用すると良いと思います。

スライディングシート(トランスファーシート)

滑りやすい布が重なるようになった構造で、ベッドで寝ている人の身体の下に敷いて、滑らせて移動させる用具です。寝たきりの方が下にずれ落ちた時や、車椅子からベッドに移り横になってもらった時など、少し上に移動介助することがあると思います。そのような時にスライディングシートを身体の下に敷くと、少ない力で移動させることが可能になります。


介護者と本人の負担が減るばかりでなく、褥瘡がある場合はベッド面との摩擦が少なくなり、傷口の保護に有用な道具です。要介護2〜5であれば「体位変換器」として介護保険でレンタル可能です。

杖・歩行器

杖・歩行器も介護保険でレンタル可能です。ただし、杖においては四脚杖、ロフストランド杖、松葉杖など特殊なものに限り、T字杖(一本杖)についてはレンタル対象外です。

杖についてはこちらで詳しく紹介しています ⭐
→ 理学療法士から見た「杖の選び方と考え方」

マットレス

ベッドに用いるマットレスも「床ずれ防止用具」や「体位変換器」として、要介護2〜5であれば介護保険によるレンタルが可能です。

自ら動くことができなくなり、褥瘡の兆候が見えた場合や危険が大きいと判断される場合、マットレスの選定も重要になります。

一般に重さを吸収して圧力を分散させるものが褥瘡予防に効果的です。一方で軟らかい素材は動きにくく、いくらか動ける人にとっては自立を妨げる可能性があります。中心部だけ圧力を吸収し、周囲はある程度固さを残したタイプもあります。

状態やその時の目的に合わせていくことが大切 です。看護師、理学療法士、作業療法士などと相談しながら適したものをその都度選んでいきましょう。

入浴補助用具

身体が不自由な方にとって、特に困難になりやすいのがお風呂の問題です 🛀

お湯で床が滑りやすい。身体を洗うことができない。浴槽に入れない。入ったとしても立ち上がれないなど、多くの問題が出てきます。

入浴においても福祉用具はたくさんあります。浴室や浴槽内でかがまなくても済むようなコンパクトで滑りにくい椅子や、浴槽に設置するタイプの手すり、車椅子のように座ったまま浴室内に入れるシャワーキャリーなどです。

入浴動作は障害が多く、家のお風呂は使わずに通所サービスで済ませる方もいます。もし、家の風呂を使用するようでしたら、住宅改修と合わせて、これら福祉用具も上手に活用すると良いと思います。

入浴補助用具はレンタルできませんが、購入の際は介護保険で補助が使えます。上限額など条件もありますので、事前にケアマネや福祉用具業者に相談するようにしましょう。