介護保険のシステムをわかりやすく伝えます

在宅でのリハビリテーション
ミチル
お兄ちゃん、おじいちゃんのために介護保険の勉強をしようよ
チルチル
介護保険ってなんだか難しそうだなぁ

高齢者や身体に障害がある人にとって、介護保険はとてもありがたい制度です。自宅で生活する上で大きな助けになります。

しかし、一般の方には制度が複雑に感じるようで、よく質問を受けます。長年仕事をしている私自身も、いまだに不明なことを上司に聞いたり、本で調べたりするくらいなので、一般の方や高齢者にとっては難しいと感じるのがむしろ当たり前かもしれません。

在宅のリハビリも主にこの介護保険制度(または医療保険)を用いてサービスを行います。ここではなるべく簡単に介護保険について説明したいと思います。

介護保険の概要

介護保険は2000年に新設された制度です。
利用している人にとってはあまり実感がないかもしれませんが、年ごとに小さな改正を繰り返し、何年かに一度、大きな変更があります。
当初は利用者負担1割でスタートしていましたが、収入に応じて2割負担、3割負担と変更されたのは記憶に新しいところです。このようにずっと同じ制度ではなく、社会情勢に合わせて変更が行われています。

介護保険は市町村が窓口です。お住まいの住所の役所に行けば担当の部署(「介護保険課」という名称が多いようです)がありますので、そこで相談や手続きができます。電話で問い合わせを受け付けていますので、わからないことは足を運ぶ前に聞いておくと良いでしょう。

以下に簡単な概要をまとめます。

  • 2000年に設立された制度。年ごとに小さな改正を繰り返している。何年かに一度、大きな変更がある。
  • 利用できるのは65歳以上の方と、45歳以上の特定疾病の方(参考記事「リハビリを受けたい! どうすればいい?」)。それ以外は医療保険や福祉制度の対象になる。
  • 自己負担料金はサービス料の1割だが、収入や資産によって2~3割負担の場合もある。
  • 要支援1~2、要介護1~5という介護度に分けられて、それぞれ1ヵ月に使えるサービス料の上限が決められる。重症なほど多くのサービスが使える。
  • 介護度は1~2年ごとに更新されるが、病気になったなど状況が変われば途中でも変更の申請を行うことができる。
  • 担当のケアマネージャーが必要。ケアマネを通じてサービスの計画(ケアプラン)、手配、調整が行われる。

介護度 要支援と要介護について

役所に介護保険の申請をすると、認定調査員が来て身体の状態を確認しに来ます。その時の調査と主治医の意見書によって、全国基準の判定と専門家からなる審査会を経て、介護度が決定されます。

認定の結果に不服がある時は申し立てを行うこともできます。

結果は自立(非該当)、要支援1~2、要介護1~5に分かれます。自立とは介護や支援がなくても十分に自立して生活できると判断された状態です。それを除くと要支援1が最も軽度で、次に要支援2、以下要介護1→5という順番に重度という判断になります。

要支援1と2、あるいは要介護1から5のそれぞれの間には、サービスを使える上限こそ違うのですが、それ以外にはほとんど違いはありません。特別養護老人ホームに入所する時に要介護3以上というのが基準になるくらいです。

しかし要支援と要介護では異なる部分がいくらかあります。

ひとつは要支援の場合は、地域包括支援センターがケアマネージャー(以下、ケアマネ)を担当する決まりになっています。一方で、要介護の場合は他の居宅介護支援事業所が担当することになっています。

場合によっては要支援の方でも居宅介護支援事業所のケアマネが担当することがあります。これは地域包括支援センターから委託という形になります。要介護と要支援の間で介護度が何度も変更になると、利用者様はその度にケアマネの事業所を替わる必要があり、負担や不利益が大きいためです。

基本的には要支援から要介護になった時に、地域包括支援センターから居宅介護支援事業所にケアマネが交替し、以降はそのままというパターンが多いです。

サービスにおいても要支援の方の場合、介護保険における利用に若干制約があり、要介護の場合とサービスの提供が異なる場合がいくらか見られます。
気になることは担当のケアマネに尋ねてみると良いでしょう。

介護度は使えるサービスの上限に関わります。介護度が大きい方が使えるサービスが増えて選択肢が広がります。重症の方にとっては、使えるサービスが増減するのは切実な問題だと思いますので、介護度と現状が一致していないようでしたら申し立てを考えましょう。とは言っても自分で介護度が妥当か判断するのは難しいと思うので、ケアマネや経験のある訪問看護師などに相談すると良いでしょう。

一方で、介護度が増えると「身体が悪くなった」と落ち込む方もいらっしゃいます。仕事をしている人間の実感としてはそのような理由で落ち込む必要はないと思います。本来、同じ基準で判断されているはずなのですが、同じような身体の状態でも介護度に差が出ることはよく見られます。全く身体の状態が変わっていないにも関わらず、介護度が変更になることもあります。判断する人が変われば解釈も変わるのかもしれないので、身体の状態は医師や普段介入している関係者を信頼して、そこを深刻に受け止める必要はないと思います。

介護保険はケアマネージャーが中心

介護保険を利用するにあたり、まず最初にケアマネを決めます。これは介護保険自体が、ケアマネがいなくては成り立たないシステムになっているからです。

ケアマネは利用者様や家族から状況や希望を聞き、医師などの情報を参考にしながら、どのようなサービスが必要か計画(ケアプラン)を考えます。看護師、リハビリ、ヘルパー、通所サービス、福祉用具など自宅で安心して暮らすために必要なサービスの大枠が決まったら、サービス担当者を集めて会議を開き、それをもとにプランを確定して方針を決めます。介護保険はケアマネが立てたケアプランに沿って各事業者がサービスを提供する形になっています。

現実的にはその場ごとに細かな対応が変わることはありますが、大まかな方針はこのケアプランに従ってサービスを進めます。

プランが立った後も、ケアマネは状態に応じて情報を収集し、サービスの再検討、配置、手配、調整などを行います。

基本的に介護保険はケアマネがサービスをコーディネートしてくれるので、制度の詳しい知識がなくても利用者様は安心して生活することができます。


〈ケアマネージャーは介護保険と利用者様の架け橋です〉

何かトラブルがあった場合、医療的なことであれば医師や看護師ですが、その他のことはケアマネに相談すれば良いでしょう。名前の通り、ケア(介護の)マネージャー(管理者)というわけです。

ケアマネは役所に相談すれば紹介してくれますし、知り合いがいればそちらに頼むこともできます。しかし、あまり居住区と事業所が遠いケアマネは避けた方が無難です。距離が遠いと顔を頻回に出すことが難しくなり、情報収集の機会も少なくなり、対応が遅れる可能性もあります。本来はそんなことはあってはいけないのですが、距離は遠すぎない方が無難かと思います。

たくさんのサービスがチームワークでサポートするシステム

ケアプランをもとに各事業所はそれぞれサービスを提供します。担当者はケアマネや他のサービス事業所と連絡をとりながら情報を共有するようにします。

利用者様の状態によって、どのようなサービスが必要か変わってきます。また、ケアマネがまとめ役であることは変わりないですが、場合によってはサービス現場で、中心となって主導していく職種が出てきます。

例をあげると、例えば褥瘡(床ずれ)ができてその改善が何より必要な場合は、看護師が状態を見ながら、他のサービス担当者にも介助方法のお願いなどをします。利用者様が寝たきりで全く動けないのであれば、ヘルパーには介助時に褥瘡部の負担を減らす方法やどのような姿勢で寝て過ごしてもらうのかアドバイスします。また、リハビリ専門職とより良い介助方法や姿勢のセッティングについて検討したり、必要な福祉用具についてケアマネに伝えて、レンタルへと進めることもあります。

病状が安定しており、特にリハビリに意欲を持っている場合でしたら、看護師の訪問を減らして、リハビリとヘルパーの訪問、及びデイサービスの利用といった形になるかもしれません。そのような場合でも、リハビリとデイサービスで意見交換をしながら、より良いリハビリが提供できるようにします。また、歩行が安定すればヘルパーと買い物で外出するように勧めて運動量を増やすことも考えられます。杖や歩行器など必要な福祉用具に関しても、リハビリからケアマネに伝えてレンタルへ進めることができます。

このようにその人の状態や希望によって必要なサービスは変わります。そして各サービス担当者はそれぞれの専門を生かしながら協力して援助に当たります。ケアマネは情報を収集し各サービスを管理、調整しながら、より良い支援に向けて環境作りに努めます。


〈介護保険は利用者様を中心に各サービスがチームワークで支えます〉

大切なのはチームが協調することです。チームワークが上手くとれていると、相乗効果により利用者様への支援がより高いレベルで提供できます。

介護保険はチームが共同して利用者様をサポートすることが理念であり、そのように形作られています。