PT、OT、STとは? 3つのリハビリ専門職について

リハビリの基礎知識
ミチル
ここではリハビリ専門職と呼ばれる3つの職業について解説していきます

リハビリには多くの人々が関わります。
医師を中心に、普段の生活や体調管理を担当する看護師や介護士、薬剤師と栄養士、身体の状態を正確に把握するために放射線技師や臨床検査技師、病院と外部の連絡役となるケースワーカーも大切な役割です。

しかし、皆さんが”リハビリ”と聞いてまず思い浮かべるのはリハビリ専門職と呼ばれる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3職種ではないでしょうか?

3つのリハビリ専門職
理学療法士(PT:Physical Therapist)
作業療法士(OT:Occupational Therapist)
言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)

それぞれの職業に就くには所定期間の専門教育(専門学校3年以上、大学は4年)を受けた後、国家試験に合格する必要があります。 ※STのみ4年制大卒者は2年になるなど期間を免除する制度があります。

たまに高齢者の方などで、リハビリではなくマッサージと言う方もいますが、マッサージは”あんまマッサージ指圧師”という別の国家資格があります。

この3つのリハビリ専門職は、病院では訓練室や病棟で、または住宅に訪問して運動や様々な練習を行います。「リハビリの先生」と呼ばれることも多い人たちです。
これらの職種は病気やケガの後遺症に対する治療、および予防に携わります。実際に治療を行うだけでなく、自宅での生活や運動についてアドバイスもしてくれます。リハビリを必要とする人たちにとって強い味方になってくれる存在です。
それではそれぞれの職業について、実際にどのようなリハビリを行うのか説明していきたいと思います。

理学療法士(Physical Therapist:PT)

病気やケガなどで身体に障害がある人や、将来的に発生、悪化が予測される人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、予防を目的に、運動や物理療法などを用いて、より良い自立生活が送れるよう支援します。
※物理療法とは、熱、冷刺激、電気、光線、電磁波などを器具で用いて行う治療法です。

理学療法士が目標にするのは、主に生活する上で基盤となる動作の改善、維持です。
寝返る、起き上がる、立ち上がる、歩く、階段を上り下りするなど、日常生活を行う上で基本となる動作の改善を目指します。またそれら基本動作の妨げになっている原因も検査して治療します。具体的には関節可動域の拡大、筋力強化、呼吸機能の改善、バランス能力の向上、麻痺の回復、痛みの軽減などを行います。
例えば、階段を上り下りする目標があるとすれば、実際に階段の練習をするだけではなく、それに必要な身体の柔軟性、筋力、バランスなども確認して向上を目指します。

運動やそれに伴う身体の知識に優れた理学療法士は、医療、介護の現場だけでなく、最近はスポーツ分野にも活躍の場を広げています。

作業療法士(Occupational Therapist:OT)

理学療法士が基本的な動作を担っていたのに対して、作業療法士は応用動作や生活での実践的動作を練習します。

身体の状態が整い、座る、歩く、立つなどができたとしても、それだけでは生活の自立に十分ではありません。例えば、トイレ動作は便座に座る、立つだけの動作ではなく、ズボンの上げ下ろしが必要です。お風呂に入るには立って歩くだけでなく、またぐ動作や身体を洗う動作が必要になります。
生活では基本動作の組み合わせや応用が必要であり、着替え、食事、ものを書くこと、巧緻動作(手先の細かい運動)、身だしなみを整えることに加えて、料理や職業に関する動作なども対象に含まれます。

また、病気によっては身体の状態が完全に戻るわけではありません。後遺症が残った身体でどのように生活動作を行うのか、または福祉用具の利用や住宅改修が必要なのか、それらをアドバイスしたり実際に模擬的に訓練したりするのも作業療法士の役割です。

また、作業を行うことが精神にも良い影響を与えることがわかっており、精神科のリハビリにも関わります。これは理学療法士にはない特徴のひとつです。

性質上、理学療法士は歩行や移動能力の治療に携わることが多く、作業療法士は上肢(肩・腕・手指)の治療に携わることが多いです。そのため、病院によっては下肢(太ももから足指)の治療は理学療法士、上肢の治療は作業療法士というように分けているところもあります。
また、訪問でのリハビリは病院に比べて行う頻度が少なく(介護保険で訪問できる回数が限られています)、必ずしも理学療法士、作業療法士の両方が介入できるわけではありません。その場合は必要に応じて、他職種の要素も取り入れながら訓練を行います。例えば、理学療法士が着替えや入浴動作の指導をすることもありますし、作業療法士が関節可動域訓練や筋力訓練を行うことも実際の現場では多くあります。このように職業上の主たる業務内容は決められていますが、実際の現場では状況に応じて柔軟に対応しています。

言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist:ST)

理学療法士、作業療法士の治療対象が主に目で見える動作であるのに対して、言語聴覚士が扱うのは、発語、理解、聴覚(話す、理解する、聞く)などコミュニケーションに関連する能力や認知機能、及び摂食・嚥下機能(飲食する能力)が中心です。

他者とコミュニケーションをとることは、生活の利便性だけでなく、人間が社会の一員として自分の存在を認識し、充足感を得る上で非常に大切な能力です。それは単純に言葉を表出する能力、聴いて理解する能力だけでは足りません。記憶、想起(思い起こすこと)、感情、意欲など多くの要素を脳で統合させて、他者と関係を作っています。

これらコミュニケーション能力の障害は脳神経疾患、発達障害、精神疾患、口腔・咽頭部の手術後など様々な原因で起こります。言語聴覚士はその原因を検査し、必要に応じて練習、指導、アドバイス、その他の援助を行います。

摂食・嚥下機能においては、言語療法の領域である口腔・鼻腔・咽頭部と問題が重なり、認知機能も影響することから、リハビリ専門職の中でも特に言語聴覚士が大きく関わります。