専門用語集

医療や介護の世界では多くの専門用語があります。なるべく一般の方にわかるような言葉や、説明を加えながら書くことを心がけていますが、かえって冗長になることを避けるため、時には一部で馴染みが少ないであろう言葉も使っています。
五十音順に用語を並べましたので、本文の理解にお役立ていただければと思います。

あ行

いじょう【移乗】
ベッド-車椅子の間などを乗り移ることを言います。車椅子-トイレ間、車椅子-乗用車間なども同様に移乗と呼びます。英語では「トランスファー」と言い、こちらもよく使われる言葉です。

いりょうほけん【医療保険】
社会制度としての健康保険、国民健康保険などをさします。民間会社が運営する「生命保険」なども広い定義では含まれますが、本サイトで取り上げているのは前者です。

いろう【胃ろう】
腹部に小さな穴を開けてチューブで胃とつなげることで、そこから栄養を補給できるようにします。摂食・嚥下機能の低下などによりご自身で十分な栄養が摂取できなくなった場合、選択肢のひとつとして用います。胃の摘出など理由があって胃に接続ができない場合、腸と接続する場合もあります。その場合は「腸ろう(ちょうろう)」と呼びます。

うんどうりょうほう【運動療法】
ご自身で身体を動かすことや、他人が介助しながら動かすなど、運動を行うことで身体機能の改善をはかる治療法です。関節運動、筋力訓練、動作訓練などリハビリにおいて多くがこれに当てはまります。一般の方が理解している「運動」は自分で身体を動かすことをさしますが、リハビリでは他人に動かしてもらうことも「他動運動」と言って、運動に含まれる場合があります。
呼吸訓練や嚥下訓練なども厳密には運動に違いありませんが、それらは一般的には運動療法には区分されません。

えし【壊死】
身体の一部分の組織が死んでしまうことを壊死と呼びます。原因としては感染症、ガスなど化学物質、血流の障害などが考えられます。
血流がひどく障害されると組織に栄養を届けることができず、それが重度になると壊死を起こします。例えば、「脳梗塞」は脳の血管がつまり栄養が行かないことが原因なので、脳神経細胞の壊死による病気ですし、「褥瘡」も皮膚や皮下組織に十分な栄養が行かないことによる、それら細胞の壊死による病気と言えます。

か行

かいふくき【回復期】
脳血管疾患、骨折など後遺症を残す病気において、急性期後の特に回復が起こりやすい期間のことをさします。

かし【下肢】
股関節(股の付け根)から足の指先を「下肢」と呼びます。医療や介護では「足」と言うと正式には足首から指先までを指します。補足ですが、股関節から膝までを大腿(だいたい)、膝から足首までを下腿(かたい)と呼びます。

かんせつこうしゅく【関節拘縮】
関節が硬くなり、本来動く範囲が動かなくなることを言います。関節拘縮はリハビリで問題になることが非常に多い症状のひとつです。動きづらくなるだけでなく、着替えの介助をする時など痛みのもとになります。
動かないことも原因のひとつになりますので、リハビリではその予防も大切な仕事のひとつです。

かんふぁれんす【カンファレンス】
カンファレンスとは直訳すると、会議、相談、会談という意味です。医療や介護の場合は、スタッフ同士の会議だけでなく、本人や家族を交えた病状説明や今後の方針の打ち合わせなど多くの意味で使います。

きかんせっかい【気管切開】
病気の症状が進んだ場合や、一時的に呼吸機能が大きく低下した時など、自力で痰の排出が困難になると窒息の危険が高まります。そのような場合に頚部の前面に気道に通じる穴を開けて、気管カニューレという管を入れます。空気の出入りはそこから行うようになります。症状が回復して呼吸が十分に行われるようになれば、気管カニューレをとりのぞくことも可能です。その場合、穴は自然にふさがります。気管カニューレの種類によっては、気管切開の状態であっても会話することが可能ですが、労力がかかりますし、上手く話すには練習が必要な場合もあります。

きゅうせいき【急性期】
病気の発症から時間が経過しておらず、身体の状態が不安定で多くの安静が必要な期間のことをさします。

きょうかく【胸郭】
胸に手を当てると肺を守る肋骨が触れると思います。それが胸郭です。正確には背骨と胸骨とそれを結ぶ肋骨によって構成されます。肺自体には自分で空気を出し入れする機能はありません。横隔膜や頚部筋により胸郭が動き、それに引っ張られて肺は前後左右に広がります。そのため、胸郭の動きが制限されると肺は下方向にしか動くことが出来ず、呼吸できる空気の量が大きく減ります。

きょたくかいごしえんじぎょうしょ【居宅介護支援事業所】
介護保険の計画作成、手配などを行うケアマネージャーの所属する事業所です。民間の事業所も多く存在しており(というよりほとんどが民間の事業所です)、規模が小さいところから大きなところまで様々です。介護保険における要介護者のプラン作成を担当します。要支援者については、本来は地域包括支援センターのケアマネが担当しますが、そこから委託という形で請け負うこともあります。
※要介護、要支援、地域包括支援センターについてはこの専門用語集でも説明していますのでご参照ください。

くりにっく【クリニック】
医師が診療していればすべて「病院」ではなく、無床もしくは19床以下の医療機関は正式には「クリニック」と定められています。クリニックは「医院」「診療所」「○○整形」など様々な名称が見られます。それに対して「20床(しょう)以上の入院施設を持つ医療機関」は「病院」と区分されます。

くんれん【訓練】
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが行う運動、練習、体操などを「訓練」と総称します。リハビリで実際に行われている内容と合っていないという意見もあり、最近は「練習」という言葉を使うこともあります。もともとアメリカからリハビリの概念を取り入れた時に「exercise(エクササイズ)」という言葉を訳したことが始まりではないかと思います。訓練も練習も同じ意味だと思っていただければ良いです。このサイトでも文脈に合わせて両方使っています。

けあまねーじゃー【ケアマネージャー】
介護保険において利用者の希望を伺い、サービスの計画(ケアプラン)の作成や実際にサービスの手配や調整など行うまとめ役的な職業です。ケアマネと略します。

けいぶ【頚部】
首のことです。頸椎は首の脊椎(背骨)をさします。

ごーる【ゴール】
目標のことをさします。リハビリは身体を元の状態に近づけるプロセスなので、ゴールは場合によっては改善の限界点を示すこともあります。

さ行

さーびすたんとうしゃかいぎ【サービス担当者会議】
介護保険制度において、サービスの担当者が集まり、現状の把握や改善点などより良いサービスを提供するために話し合う会議をさします。ケアマネが主に企画、運営をします。この会議は義務づけられていて、たとえば利用者様の変化(入退院、病状の変化、新しいサービスの導入)などの度に会議を行うのが基本です。しかし、あまりに頻回だとかえって利用者様の負担が大きいので、そのような場合はケアマネが担当者に意見や情報を聞いて、話し合いの代わりにする場合もあります。

ざいたく【在宅】
一般的には「家にいること」を指しますが、医療や介護では、何らかの病気や障害を抱えながら家で過ごされている状態をさします。在宅診療、在宅看護、在宅リハビリなど用語と組み合わせて使います。また、これら在宅サービス全体を総称して単純に「在宅」と略することもあります。

さんそりょうほう【酸素療法】
正式には酸素吸入療法と呼びます。呼吸器疾患や全身状態の低下により、十分な酸素を体内に取り込めない病状に対して、酸素濃縮器やボンベなどで濃縮した酸素を投与する治療法です。酸素の濃度は機械により調節します。機械は在宅用、携帯用などもあり、在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy)は略してHOTと呼ばれて、多くの呼吸器疾患の方が用いています。酸素療法と運動療法を組み合わせて、苦痛を少なく運動を行うことも可能です。

じょうし【上肢】
肩から手の指先までを「上肢」と呼びます。医療や介護では「手」というと正式には手首から指先までを指します。補足ですが、肩から肘までを上腕、肘から手首までを前腕と呼びます。

じょくそう【褥瘡】
一般的には「床ずれ(とこずれ)」とも呼ばれます。動くことができず、身体の同じ場所に圧迫が続くことや、介助する時に剪断力(引き裂ける力)が加わることが原因です。壊死を起こした状態、またはそれに近い皮膚が弱くなった状態をさします。

そうぐりょうほう【装具療法】
側弯症(そくわんしょう)など身体の変形に対して装具を用いて矯正、固定するものや、機能が低下した部分を装具で補うものなど、装具を用いた治療法全般をさします。運動療法と組み合わせて行われることも多いです。

た行

だいしょうどうさ【代償動作】
どこか身体の一部分で運動機能に問題があった場合、身体は別の部分でそれを補う働きをします。これを「代償」または「代償動作」と呼びます。代償動作が長期間続くことによりその動作は固定化、あるいは積み重なることで複雑化します。

たどううんどう【他動運動】
本人の力でなく、他人が動かすことを他動運動と呼びます。他にも、本人が動かすことを自動運動、本人に動かしてもらいながら手伝うことを自動介助運動と呼びます。

ちいきほうかつしえんせんたー【地域包括支援センター】
地域の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防などを目標にした事業所で、それらの相談や支援を行っています。市町村や区域ごとに設置されています。公共事業的な意味合いが強いですが、実際には行政から民間業者が委託を受けて運営している場合もあります。
介護保険における要支援認定者は、この地域包括支援センターのケアマネが担当になるのが原則です。

でいけあ【デイケア】
正式には通所リハビリテーションと呼びます。通所サービスのひとつで、食事、入浴など生活サービスに加えてリハビリも行えます。理学療法士などリハビリ専門職の配置が義務づけられています。デイサービスに比べて料金が高く設定されています。

でいさーびす【デイサービス】
正式には通所介護と呼びます。デイケアと同じく、食事、入浴など生活サービスを受けられますが、理学療法士などリハビリ専門職の配置は義務づけられていません。しかし、最近はニーズの高まりを受けて専門職の配置をする事業所も出てきています。食事、入浴サービスを行わずトレーニングマシンなどによる訓練を半日で集中的に行う事業所など、その内容は事業所によっても違いがあります。

な行

のうけっかんしっかん【脳血管疾患】
脳血管障害と同じ意味です。脳の血管の障害による病気をさします。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが含まれます。

のうしんけいしっかん【脳神経疾患】
脳やそれに関連する神経の病気全体をさします。例えば、髄膜炎、脳腫瘍などは脳の血管による障害ではないですが、脳神経疾患には含まれます。パーキンソン病や脊髄小脳変性症など神経難病、脳血管疾患、認知症など多くの病気が含まれます。

は行

ぱーきんそにずむ【パーキンソニズム】
パーキンソン症候群とも呼びます。パーキンソン病は中脳の黒質という部分の変性が原因なのですが、それ以外の病気でも筋肉の固さ、小刻み歩行、すくみ足などパーキンソン病とよく似た症状が出ることがあります。そのような症状のことをパーキンソニズムと呼びます。脳血管疾患、認知症、加齢による脳の萎縮などでも、時としてそのような症状が見られます。

はいようしょうこうぐん【廃用症候群】
安静や運動の不足によって身体機能が低下することをさします。関節拘縮、筋力の低下がよく言われますが、心臓や肺など呼吸循環機能、嚥下機能などあらゆる能力が使わないことで低下します。

ばび【馬尾】
脊髄神経は頸椎から胸椎まではひとつにまとまっていますが、腰椎ではバラバラの状態で脊柱管の中にあります。その姿が馬の尻尾に似ていることから「馬尾」と呼びます。

病院【びょういん】
医師が診療していれば「病院」と言うわけではなく「20床(しょう)以上の入院施設を持つ医療機関」と法律により定められています。つまり入院患者のベット数が20以上の、比較的規模の大きい医療機関を指します。無床もしくは19床以下のものは正式には「クリニック」と呼ばれます。クリニックは「医院」「診療所」「○○整形」など様々な名称が見られます。

びょうき【病期】
現在、病気がどのような段階にあるか示す用語です。急性期、回復期、慢性期(維持期、生活期)、終末期などという言葉で表します。それとは別に病気それぞれで進行によって区分しているものもあります。
例えば、パーキンソン病ではヤールの重症度分類が有名で、これはstageⅠ~Ⅴというように表します。変形性股関節症では、前股関節症、初期股関節症、進行期股関節症、末期股関節症という言葉で表されます。

ふずいいうんどう【不随意運動】
動作時、手足が自分の意図した以外の動きをするものや、安静時でも震えたり勝手に動いたりするような症状を不随意運動といいます。脳血管疾患やパーキンソン病、脊髄小脳変性症など脳が障害される疾患でよく見られます。

ぶつりりょうほう【物理療法】
物理療法とは牽引、温熱、寒冷、プール、電気など、徒手(人によるもの)ではなく物理的な力によって症状を緩和する治療法です。それぞれ刺激によって効果や目的が異なります。例えば、牽引は関節を離す力を加えることで筋肉など周囲の組織にストレッチ(伸ばす)効果を与えます。温熱は温めることで血流の循環を良くします。電気も神経を刺激することで血管を拡張して血流を良くする効果があります。電気については種類によって作用させる組織の深さを調節することも可能です。寒冷は冷やすことで痛みの緩和や、炎症や浮腫など組織損傷後の症状を抑えることができます。プールについては浮力によって関節に負担なく歩行練習ができるだけでなく、水圧が関節の回復を助長すると言われています。このように種々の効果がありますが、それぞれ特性や禁忌(行ってはいない状態)があり使用には十分な知識が必要です。

ほぞんりょうほう【保存療法】
手術をせずに自然治癒を促す形での治療です。例えば、骨折後に手術をせずにギプス固定して、自然に接合を待つような治療方法を指します。

ま行

まんせいき【慢性期】
症状が固定、あるいは変化が少ない状態の時期をさします。維持期や生活期とも呼ばれます。回復期後や在宅で長年患っている関節症などもこの時期にあたります。

や行

ようかいご【要介護】
介護保険を受ける際に、生活にどのくらいの介護や支援が必要か調査が行われます。その結果に応じて要支援1~2、要介護1~5の区分が決められます。要支援1が最も介護が必要なく、要介護5が最も多くの介護を必要とする状態です。この区分によって受けられるサービスの内容や限度が決められます。この区分は病気の悪化などで状態が変化した時には変更の申し立てができますし、定期的に見直しが行われます。

ようしえん【要支援】
「要介護(ようかいご)」の項を参照してください。

よご【予後】
病気やケガにおいて、将来的にどのように回復するのか、あるいは変化がないのか悪くなるのか、このような見通しを「予後」と呼びます。

ら行

りようしゃ【利用者】
病院では来客者は基本的に病気を患っている人なので「患者」と呼びますが、施設や在宅ではサービスを利用している人という意味で「利用者」と呼びます。また、病気を持ちながら自宅で治療している人を「療養者」と呼ぶこともありますが、実際には「利用者」で多くが統一されています。

りらくぜーしょん【リラクゼーション】
緊張を緩めること、精神的に安堵する、息抜き、くつろぐなどの意味があり、転じて筋肉など組織の緊張を緩める際の手技、サービスを示す場合もあります。

わ行